パンチュール ペイザンヌ(Peinture Paysanne)はフランス語で「農民の絵」を意味し、フランス東部やスイスのフランス語圏に伝わるフォークアートです。
描き方の特長は、丸筆を使い、絵具が乾かないうちに次の色を塗り重ねたり、2色を筆につけて描く手法が多くみられます。
始まりと歴史
16〜17世紀、貴族や上流階級の人々の間で流行っていた家や家具の装飾を、後に貧しい農民たちが真似て、手持ちの家具に素朴なペイントを施し、嫁入り道具にしたのが始まりだとも言われています。
農作業のない長い冬の間、家具や調度品を作ったりペイントしたりしました。
また、宗教革命によって修道院を追われた修道士お抱えの工芸家たちも、家具の装飾絵付師として働き、優れた芸術性のある作品を残しています。
発展
農民画は18世紀に最盛期を迎えます。18世紀前半に描かれたデザインはバロック様式で、左右対称の力強いものでした。
よく描かれたモチーフは、キリスト教で三位一体「神、キリスト、精霊」のシンボルであるチューリップ、キリストを象徴するバラ、純潔を意味するユリ、子孫繁栄を意味するザクロ、神の声を伝える鳥などです。
18世紀後半には優雅なロココ様式が流行し、ロカイユと呼ばれる貝殻のモチーフや、CやS状の唐草模様、大理石模様、非対称のデザインが用いられました。
そして19世紀に入るとビーダーマイヤー様式が流行、デザインは簡素化され、モチーフや色彩はより柔軟になっていきました。